坊主憎けりゃ袈裟までも


光市母子殺害事件弁護団へのバッシングが激しい。
しかし弁護団の言動に問題があったからというより
犯人を憎むあまり、弁護団まで叩いているように見える。


1. 弁護団の主張がおかしい


たしかに変だけれど裁判で奇妙奇天烈な主張がされるのは珍しいことではないらしい。
面白い上告趣意書を集めた本が昔あって、広告には「抱腹絶倒」と書いてあったくらいだ。


今回の弁護団の主張について言えば、たしかに苦し紛れの主張なんだけど、背景を考えると仕方ない面がある。
殺人を認めた上で情状酌量を求めるのはオーソドックスなやり方で、一審、二審は
これにより死刑を免れているので別に悪い方法ではない。しかし最高裁の差し戻し決定で
情状酌量を否定された以上、殺人を認めたのでは確実に死刑になってしまう。


弁護側が傷害致死でストーリーを組み立て直すのはやむおえない面があるのだ。
無理があると判っていてもそうせざるをえない。
正攻法が失敗することが確実な場合、奇策を取るのは致し方ないことである。


状況が絶望的なのは当事者が一番良くわかっていると思う。
しかし弁護人は最後まで依頼人のために闘うのが義務なのだ。


ところで弁護団を非難する人たちは弁護団はどのような主張をすべきだと考えているのだろうか。
ひょっとして従容として死刑を受け入れますと被告・弁護側は言うべきだと考えているのだろうか。



2. 被害者遺族に対するセカンドレイプ


安田弁護士は被告の代理人であって、被害者遺族の代理人ではない。
法廷での主張が被害者遺族の気に入らないからといって非難するのはおかしいだろう。
被害者遺族には耳を閉ざすという選択肢もある。
レイプ事件で被害者女性が反対尋問を受ける苦痛に比べれば問題とするほどのものではない。


3. 弁護団死刑廃止を訴えるのに被告を利用している


こう批判している人は多いのだが、何を根拠に言っているのだろうか。
法廷で死刑廃止論を主張したという事実でもあるのか。
安田好弘弁護士が死刑廃止論者であること以外の根拠は示されていないようだ。


逆に死刑存置派の方がこの事件を利用してアンチキャンペーンを張ってるように見える。



批判派

この21人の弁護団の女房子供殺されて犯されても同じこといえるのか?
http://d.hatena.ne.jp/muffdiving/20070525/1180107701

J-CAST
http://www.j-cast.com/2007/05/25007937.html


擁護派

刑事弁護人は被害者のために意図的に手抜きをすべきか(小倉弁護士
http://benli.cocolog-nifty.com/la_causette/2007/05/post_2ce0.html


弁護士の仕事って、(23mmの銃口から飛び出す弾丸は)
http://d.hatena.ne.jp/nijuusannmiri/20070529


冷静になれ派


煽りに入ったマスコミ報道には距離を置け
http://d.hatena.ne.jp/buyobuyo/20070527#p1


妙だな、と感じる理由
http://d.hatena.ne.jp/good2nd/20070527/1180251308


ところで批判派のお眼鏡に適う弁護士ってどういう弁護士だろう。
世間の目を気にして、被害者家族の機嫌を損ねないように注意して弁護をする。
そのために依頼者にとって最も有効な戦術を避けることもある。


私ならそういう弁護士に仕事を頼まない。というより
依頼人を裏切る弁護士の方こそ資格を剥奪すべきだろう。


9/28 追記 現在の弁護団の弁護方針は奇策ではなく正攻法のようだ。