足利事件と DNA 鑑定

[司法] 足利事件と DNA 鑑定


日経サイエンス 2009年7月号の塩谷喜雄のコラムで足利事件のDNA鑑定が
取り上げられていて、司法の科学軽視と一部のメディアのタイトルに怒っていた。


ネットのブログなどを見ると冤罪の怖さとか、司法の問題と正しく認識している人が多いが、
中にはピントのずれた記事もある。


本人はやってないのに、さぞ、驚いたことでしょう。
科学が信じられなくなったことでしょう!
もう神の罰が下ったとでも思うしかなかったでしょう!
可哀想という言葉などでは済まされないことです。
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いつの時代でも「科学」は絶対ではないということを、
私たちは知っておかなければならないと思います。


マスコミのタイトルにも以下のようなミスリーディングなものがあった。


19年目の真実解明へ 深まる科学への疑念
http://www.shimotsuke.co.jp/special/ashikaga-jiken/news-scope

菅家受刑者は犯人なのか、無実なのか。当時の科学捜査の信ぴょう性が問われる。


因数分解足利事件 DNA型一致せず 「科学万能」に一石
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/245522/

 19年前に起きた足利事件でDNA型が一致しなかったとする東京高裁による再鑑定結果は、日進月歩の科学技術が冤罪(えんざい)を防ぐ有力な武器になり得ることを示す半面、「科学鑑定」を万能視しがちな捜査手法や司法判断にも一石を投じたといえます。


DNA型鑑定の「万能神話」揺らぐ 足利事件
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090421/trl0904212257022-n1.htm

 DNA型鑑定をめぐる捜査手法に「疑問符」がついたことで、鑑定の精度について議論が高まり、鑑定の有り方や別の事件の再審請求にも影響が出てくることも予想されてきた。「DNA型鑑定の万能神話」が揺らぎ始めた。



問題は「科学万能神話」にあるのではない。
当時 条件が良くても 1/800 の精度しかなかった DNA 鑑定を絶対視した裁判所の方にあるのだ。


あと最後の産経の記事にでてくる発言。


 足利事件の鑑定が行われた当時、警察庁鑑識課長だった岡田薫・元刑事局長は「具体的な内容が不明な段階で、個別的なコメントはすべきではないが、一般論として」と断った上で、 「厳密には、今回の鑑定に使われた細胞は当時鑑定に使われたものとは別のものだということ。たとえば、犯罪現場から容疑者の指紋が見つかったあと、その近くから全く別の指紋が見つかったからといって最初に見つかった類似指紋の証明力に変わりない」としている。

この発言の意味が理解できない。だれか説明してくれ。


現在は飛躍的に精度が向上し、今回は菅家さんの釈放に繋がったが、過信は禁物である。
コンタミ(他者の DNA による汚染)の危険性はあるし、なによりも
警察、検察、裁判所の体質が変らない限り、逆に冤罪作成の強力な道具となる危険性は高い。



参考リンク

足利事件、DNA鑑定精度向上ととぼけるマスコミの犯罪性
http://donoatari.jugem.jp/?eid=103


「DNA鑑定」の精度神話と、密室としての取調べ室
http://harana.blog21.fc2.com/blog-entry-750.html


最高裁判所の犯罪
http://takedanet.com/2009/05/post_cbdc.html


ACTION 日本を動かすプロジェクト|ACTIONコラム
http://www1.ntv.co.jp/action/2009/blog/


[自白の研究]DNA鑑定と冤罪疑惑
http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20090524


豊穣な認識を有する捜査官は,客観証拠の乏しさなど気にしない?
http://benli.cocolog-nifty.com/la_causette/2009/06/post-b2e3.html