赤いくじ

松本清張の初期の短編に「赤いくじ」というのがある。
舞台は終戦間近の朝鮮半島。ヒロインは出征軍人の妻で婦人会の会長をしている。
敗戦が決まると軍人たちはアメリカ軍をもてなすために慰安婦を用意することにし、
目的を伏せて婦人たちにくじを引かせる。そしてヒロインもそのくじを引き当ててしまう。
結局やってきたアメリカ軍は慰安婦を要求せず何事も起きなかった。
しかしくじの目的が知れた後、ヒロインは色眼鏡で見られるようになって、といった話である。


どこかで聞いたような話だと思った人もいるであろう。
この小説の高級軍人の思考形式は特殊慰安施設協会(RAA)と同じものである。
RAA は最近、 産経新聞古森義久記者の誤訳(歪曲?捏造?)で有名になったが、
アメリカの命令で作られたのではなく、日本政府が自発的に作成したものである。


http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070505/usa070505005.htm
http://dj19.blog86.fc2.com/blog-category-62.html


玉音放送から降伏文書に調印までの日程を見ても
RAA がアメリカの命令で作られたというのは無理がある。


8月15日 玉音放送
8月18日 内務省、RAA の設置を命令
8月19日 河邊虎四郎中将マニラに出発し、19,20日降伏条件について話し合う。
8月28日 厚木にアメリカ軍の先遣隊が到着する
8月30日 厚木にマッカーサーが降り立つ
9月 2日 ミズーリ号で降伏文書に調印


結局 RAA でアメリカを非難すると日本に返って来るのだ。


まあアメリカ軍も、イラクで大量の強姦事件を起こしているので、
人のことが言えるのかという気はするけれど。