橋下徹弁護士訴えられる(その2)

[司法]橋下徹弁護士訴えられる(その2)


この事件の報道を見比べて思ったことなど。


1. フジテレビ - とくダネ!

コメンテーターは懲戒請求の危険性と橋下自身は行っていないことを指摘、
彼はそれ以外では橋下弁護士を支持すると言っていたが、
この事件の問題点をはっきり指摘していて GJ!


2. 関西テレビ - スーパーニュースアンカー

最悪、法律には素人のコメンテーターが 100% 橋下弁護士を支持する発言。


3. 毎日放送 - ちちんぷいぷい

コメンテーターは 八代英輝「元裁判官・国際弁護士、
国際的な知的財産権ビジネスに携わる」と紹介されていた。


彼は光市事件の弁護団にかなり批判的だが、それでも

「説明責任を果たしてないことを懲戒請求の理由にすることはおかしい」
「弁護士は賛同できないことはやっているかもしれないけれど、
社会的な規範を犯すことはやってない。橋本弁護士の懲戒という発言は疑問」

という趣旨の発言をしていた。


八代弁護士は問題の放送を見てないと言っていた。
あらかじめビデオとか見てもらってからコメントを貰えばまた違ったろうに。


4. 朝日放送 - ムーブ
大谷昭宏宮崎哲弥橋下徹の議論という形で行われた。


大谷昭宏の発言
「被告人が主張していることを法廷に出すのは弁護士として当たり前」
「唐突に主張が変わったのではなく、安田弁護士は何度も被告人と会った上でのこと」

説明責任について
「安田弁護士は本村さんの所に出向いて説明しようとしている。(本村さんは会わなかった)」


それに対する橋下弁護士の反論は
「安田弁護士はもっと前に、最高裁の弁論を欠席する前に行くべきだ」というもの。
全体的に世論や被害者側に対しての強い説明責任を要求する論調。


橋下弁護士は喋りは流暢だし、宮崎哲弥は味方なので表面的には橋下優勢に見える。


あと気になった発言。番組の始めでの橋下弁護士の発言
「本村さんの裁判がほんとに一番大事なことなんで...」


やはりあの裁判は本村さんのものですか。


5. 弁護団からのコメント

ムーブの中で提訴した弁護団からのコメントがいくつか紹介されていた。
弁護団の直接の発言ではなく、番組がまとめたものを私が文章に起こしたものなので、
大元の文章と違う可能性があることを、あらかじめお断りしておきます。


5.1 訴因について。

(1) 十分な調査をせず懲戒請求をすべきと視聴者を煽動した。
(2)その際制度について明らかな虚偽の説明を行った。
 (a) 懲戒請求は請求の数で決まらない。
 (b)「誰でもできる」は誤解させる表現。

これに対して宮崎、橋本は検討義務は一般常識で量ればよいと反論。


5.2 懲戒請求をしなかった理由

公の場で判断を求められる裁判の方がより公正な判断を受けられる。

橋下弁護士を批判する人でも訴訟に懐疑的な人もいます。
でも私は安易な懲戒請求が違法行為になることをアピールするのには
民事訴訟を起こすのが最善の方法だと思います。
 でも懲戒請求もするべきでしょう。これだけ出鱈目な発言をする
橋下弁護士を放置しては弁護士会の自浄作用が問われます。
一審判決の後からでも遅くはないと思いますけどね。


5.3 刑事告訴しなかった理由

懲戒請求した者にたいする教唆犯となり、請求者にも取調べが必要。

番組では 3900 人も取り調べるのは不可能だからという解釈だったけれど、
これはどうなんでしょ。請求者全員ではなく、一部でもかまわないのではないのかな。
それでもかなりの手間であることは確かだし、一般人を巻き込むことは
弁護団の本意ではないのだろう。


6. 最後に

 どの分野でも専門家にとっては常識であるが、一般人には理解し難かったり
誤解していたりする命題がある。それを素人には分からんと突き放すのではなく、
噛み砕いて説明するのが理想的な専門家だと思う。
(色んなコストはかかるしんどい作業だけどね)


 ところがどちらもやらずに、大衆におもねってその誤解をさらに増幅する
「専門家」がいる。そしてテレビがそれを持ち上げる。暗澹とさせられる。

橋下徹弁護士訴えられる(その1)

やはり、というか終にというか光市事件の弁護団に属する4人の弁護士が、
橋下徹弁護士を相手取り1人当たり300万円の損害賠償を求める訴訟を起こしました。


従来の懲戒請求に対する訴訟と違うのは、懲戒請求を行った本人ではなく、
それを煽った橋下弁護士に対して行ったことです。


> 母子殺害事件の弁護士は、懲戒請求を行った人たちについて「橋下弁護士にそそのかされ、被害者的な面もある」として、現段階では提訴しない方針だという。


素人衆は勘弁して下さるようです。これまでに懲戒請求を行った人たちは一安心ですね。
でもこれからもずっと容赦してくれるかは定かではありません。今から懲戒請求するのはかなりリスキーですよ。


YouTube に問題発言のムービーが上がっていたので見てきました。
橋下先生かなりやばいです。


1.懲戒請求の重みと危険性


単に制度を紹介しただけという人がいますが、一般人なら通っても弁護士の場合はどうでしょうか。
ムービーの説明だけ聞いていると、一般企業の苦情受付窓口に投函するようなものに聞こえるますが、
懲戒請求は場合によっては弁護士生命を奪うほどの重みがあり、そのためいい加減な請求をすると、
刑事罰、民事罰を受ける可能性があります。


その重みと危険性の説明なしに、誰でも簡単にできると言ってることが問題です。
懲戒請求が誰にでも開かれているのは、弁護士に仕事を頼んだのに裏切られた人のためだと思うんですが。


あと橋下先生自身は懲戒請求を行っていないことに留意しましょう。


懲戒請求の重みと危険性については次のブログが参考になります。

http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/0aae66140bb428ac787e6169890fd64b
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-451.html


2. 因果関係


この事件の争点は違法性と因果関係の二つあり、二つとも証明できなければ原告敗訴になります。
因果関係の方は難しいのではないかという意見もありますが、
橋下先生は法律家として責任を持って発言した記者会見で述べたそうですので、
因果関係では争わず、男らしく適法性一本槍でいくかも知れません。


刑事のような厳密な証明は必要ないので、因果関係の成立は認められると思うけれど、
割合的にどうなるか(金額に関係する)は予想つかないですね。


3. 懲戒請求の理由


記者会見では「説明責任を果たしてない」というものだったが、
放送時の発言だと弁護団の弁論が理不尽だと思えば請求しても良いと受け取れる発言だった。
先ほど橋下弁護士のブログを見るとそれに近い考えのようなので引用する。


2007年 09月 07日
私から皆様へのお願い

(前略)
光市母子殺害事件弁護団の弁護活動は、弁護士会に対する信用を害した、品位を失う行為であったを立証するには、世間の皆様がそのように感じたという証拠を集めなければなりません。そしてそれは数が多ければ多いほどありがたいです。
すなわち、今回の弁護団の活動によって弁護士会の信用を失った、また品位を欠いていると考えているのは、私の独り善がりの考えなのかどうかという点がポイントとなります。
(後略)



4. その他


2007年 09月 07日
私が提訴されたことにつきまして


(前略)
私の主張の骨子は、弁護士法上の懲戒事由である「弁護士会の信用を害する行為、品位を失う行為」の基準は、世間の基準だということです。
世間が弁護士を信用できなくなった、品位がないと言っているのに、弁護士会がそれを否定することはできないと考えています。
(中略)
「刑事弁護人はたとえ国民全員を敵に回しても、被告人の利益をはかることが職責である」というカビの生えた古い題目を唱えるだけでは不十分です。
(後略)



読んでて眩暈がしてきたのでいったん打ち切ります。

やっぱり橋下先生は頭がいいわ。世間の声が弁護士の品位を決めることになれば、
正邪に関係なく有名な弁護士(特にテレビが利用できる人)は無名な
弁護士を懲戒してお終い。裁判も迅速化するでしょう。依頼人への義務から解放されて
多くの弁護士も喜ぶでしょう。

教育と金

かって小泉純一郎が首相になったころ「米百俵の精神」を説いて、この言葉は一世を風靡して。当時米百俵に感激したページがネットのあちこちに見られたものである。
米百俵を説くからには奨学金を充実させるのかと思いきや、実際の政策はまるで逆であった。


日本の奨学金などの実態は buyobuyo さんのところが詳しい。
http://d.hatena.ne.jp/buyobuyo/20070829

学費免除制度に枠があって資格があっても受けられないとか、
奨学金(という名の教育ローン)の実態とかを読むと暗澹とする。



私の場合、奨学金の必要もなく自宅から自転車で大学に通うという、
恵まれた境遇だった。おまけに当時は国立大の授業料は今と比較にならない位安かった。


また北海道の場合首都圏とは異なり、公立高校の方が偏差値が高い。
国公立大学を目指す学生は私立校ではなく、上位の公立校を目指す。


中学受験は遠い世界の出来事であった。

立命館慶祥中高一貫が始まったのは 2000 年である。)

夏休み

お盆休みは夏休みの宿題の手伝いで終わってしまった。

インターネットで検索して材料集めをしたのだが、一昔前なら図書館で
長時間調べた以上の情報が瞬く内に手に入るというのは隔世の感がある。

先生方はこの事をどのように考えているのだろうか。


最近親戚が亡くなったのだが、弔辞でキスカ島の守備隊だったことを初めて知った。
身近なところに歴史の生き証人がいたとは。

君は電気羊の夢を見たか

忘却からの帰還より慈悲深い神と魂の存在を信じる者に幸いあれ


ここでは慈悲深く全知全能である神が何故悪の存在を許すのか、
という問いに対する一つの答えが提示されている。


それは罪なくして不幸な目に合うのは魂を吹き込まれていない自動人形で、
魂を吹き込まれた人間はそういう目に会わないというものである。
RPGNPC が死ぬのは無問題みたいなものか。)


そして Kumicit さんはこれを発展させた次のテーゼを示している。


自分が犠牲になったとしたら、自分は魂があると信じている自動人形である


これ完璧にディックの世界ですよ。


Kumicit さんは死ぬまで判らないだろういってますが、そんなことはありません。

自分が魂を持った人間かそうでないのか知りたい人は
フォークト=カンプフ検査を受ければよいのです。


私?、私は受けなくとも大丈夫。

坊主憎けりゃ袈裟までも


光市母子殺害事件弁護団へのバッシングが激しい。
しかし弁護団の言動に問題があったからというより
犯人を憎むあまり、弁護団まで叩いているように見える。


1. 弁護団の主張がおかしい


たしかに変だけれど裁判で奇妙奇天烈な主張がされるのは珍しいことではないらしい。
面白い上告趣意書を集めた本が昔あって、広告には「抱腹絶倒」と書いてあったくらいだ。


今回の弁護団の主張について言えば、たしかに苦し紛れの主張なんだけど、背景を考えると仕方ない面がある。
殺人を認めた上で情状酌量を求めるのはオーソドックスなやり方で、一審、二審は
これにより死刑を免れているので別に悪い方法ではない。しかし最高裁の差し戻し決定で
情状酌量を否定された以上、殺人を認めたのでは確実に死刑になってしまう。


弁護側が傷害致死でストーリーを組み立て直すのはやむおえない面があるのだ。
無理があると判っていてもそうせざるをえない。
正攻法が失敗することが確実な場合、奇策を取るのは致し方ないことである。


状況が絶望的なのは当事者が一番良くわかっていると思う。
しかし弁護人は最後まで依頼人のために闘うのが義務なのだ。


ところで弁護団を非難する人たちは弁護団はどのような主張をすべきだと考えているのだろうか。
ひょっとして従容として死刑を受け入れますと被告・弁護側は言うべきだと考えているのだろうか。



2. 被害者遺族に対するセカンドレイプ


安田弁護士は被告の代理人であって、被害者遺族の代理人ではない。
法廷での主張が被害者遺族の気に入らないからといって非難するのはおかしいだろう。
被害者遺族には耳を閉ざすという選択肢もある。
レイプ事件で被害者女性が反対尋問を受ける苦痛に比べれば問題とするほどのものではない。


3. 弁護団死刑廃止を訴えるのに被告を利用している


こう批判している人は多いのだが、何を根拠に言っているのだろうか。
法廷で死刑廃止論を主張したという事実でもあるのか。
安田好弘弁護士が死刑廃止論者であること以外の根拠は示されていないようだ。


逆に死刑存置派の方がこの事件を利用してアンチキャンペーンを張ってるように見える。



批判派

この21人の弁護団の女房子供殺されて犯されても同じこといえるのか?
http://d.hatena.ne.jp/muffdiving/20070525/1180107701

J-CAST
http://www.j-cast.com/2007/05/25007937.html


擁護派

刑事弁護人は被害者のために意図的に手抜きをすべきか(小倉弁護士
http://benli.cocolog-nifty.com/la_causette/2007/05/post_2ce0.html


弁護士の仕事って、(23mmの銃口から飛び出す弾丸は)
http://d.hatena.ne.jp/nijuusannmiri/20070529


冷静になれ派


煽りに入ったマスコミ報道には距離を置け
http://d.hatena.ne.jp/buyobuyo/20070527#p1


妙だな、と感じる理由
http://d.hatena.ne.jp/good2nd/20070527/1180251308


ところで批判派のお眼鏡に適う弁護士ってどういう弁護士だろう。
世間の目を気にして、被害者家族の機嫌を損ねないように注意して弁護をする。
そのために依頼者にとって最も有効な戦術を避けることもある。


私ならそういう弁護士に仕事を頼まない。というより
依頼人を裏切る弁護士の方こそ資格を剥奪すべきだろう。


9/28 追記 現在の弁護団の弁護方針は奇策ではなく正攻法のようだ。

赤いくじ

松本清張の初期の短編に「赤いくじ」というのがある。
舞台は終戦間近の朝鮮半島。ヒロインは出征軍人の妻で婦人会の会長をしている。
敗戦が決まると軍人たちはアメリカ軍をもてなすために慰安婦を用意することにし、
目的を伏せて婦人たちにくじを引かせる。そしてヒロインもそのくじを引き当ててしまう。
結局やってきたアメリカ軍は慰安婦を要求せず何事も起きなかった。
しかしくじの目的が知れた後、ヒロインは色眼鏡で見られるようになって、といった話である。


どこかで聞いたような話だと思った人もいるであろう。
この小説の高級軍人の思考形式は特殊慰安施設協会(RAA)と同じものである。
RAA は最近、 産経新聞古森義久記者の誤訳(歪曲?捏造?)で有名になったが、
アメリカの命令で作られたのではなく、日本政府が自発的に作成したものである。


http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070505/usa070505005.htm
http://dj19.blog86.fc2.com/blog-category-62.html


玉音放送から降伏文書に調印までの日程を見ても
RAA がアメリカの命令で作られたというのは無理がある。


8月15日 玉音放送
8月18日 内務省、RAA の設置を命令
8月19日 河邊虎四郎中将マニラに出発し、19,20日降伏条件について話し合う。
8月28日 厚木にアメリカ軍の先遣隊が到着する
8月30日 厚木にマッカーサーが降り立つ
9月 2日 ミズーリ号で降伏文書に調印


結局 RAA でアメリカを非難すると日本に返って来るのだ。


まあアメリカ軍も、イラクで大量の強姦事件を起こしているので、
人のことが言えるのかという気はするけれど。